PAJメールマガジン

第36号 2012年2月19日発行

パラリンピアンが地域スポーツを変える

日本パラリンピアンズ協会 理事 福留史朗
(シドニー・アテネ/陸上競技)

 

皆さん、こんにちは。PAJ理事・福留史朗です。

 

新しいスポーツ法のもと現在、文部科学省中教審で向こう10年の「スポーツ基本計画」が審議されています。そして、委員にはPAJ副会長大日方邦子氏も入っています。

 

スポーツ法では初めて障がい者スポーツが明文化されたことは皆さんご存じと思います。とりわけ今後の国際競技力向上対策についてはパラリンピアンの皆さは強い関心をお持ちだと思います。また、スポーツに接する機会を増やそうと「成人の週1回以上のスポーツ実施率が2人に1人(50パーセント)」を目指しています。そして、地域スポーツの中心として考えられているのが「地域総合型スポーツクラブ」です。クラブ育成については日本体育協会、各都道府県体育協会が中心となっています。クラブ設置数については各市区町村に1クラブ以上とし多種目、幅広い年齢、自主財源による運営などとなっていますが情報発信、財源やスタッフ、クラブハウスの確保など課題もあります。しかし、今後の地域スポーツ拠点としてスポーツ少年団、学校部活などを取り込んだ活動となることも十分に考えられます。

 

そして、近い将来には障がい者の地域スポーツ活動も総合型クラブが中心となるのではと思います。平成21年に全国の総合型クラブに対し同志社大学藤田教授が行った総合型クラブ実態調査(1547クラブの内468有効回答、回収率30.3パーセント)によると31.2%のクラブで「障がい者の参加がある(かつてあった)」と回答をしています。調査では障がい者のクラブ参加に当たってはスタッフの増や障がいの無いクラブ員への理解を求めること。また、プログラム実施前に十分なコミュニケィションをとるなどを実施していることが分かりました。一方で障がい者スポーツ指導の専門家がスタッフにいなくて不安だとか障がい者への対応で手いっぱいになるとか施設等ハード面で問題がある場合もあったようです。障がい者スポーツ指導者資格を持つスタッフがいるクラブはわずか8.3パーセントでした。障がい者が地域でスポーツ活動を行うには障がいを理解した指導者の育成が重要と感じました。

 

日本障害者スポーツ協会公認障がい者スポーツ指導員(初級、中級、上級)資格者は平成23年12月31日現在21,924名、日本体育協会公認スポーツ指導者資格者は平成23年10月1日現在358,755名(スポーツリーダーを含む)です。障がいを持つ人が地域でスポーツ活動をより楽しめるようにするにはクラブスタッフの中心となっている日本体育協会資格者、各市区町村社会体育指導員への障がい者スポーツ指導者資格義務化などを進める必要があると思います。

 

また、各都道府県体育協会と障がい者スポーツ協会の一層の連携も不可欠です。パラリンピアンも自らのセカンドキャリアを考えた時に障がい者スポーツ指導員や日本体育協会スポーツ指導者資格取得について考えてもよいのではと思います。パラリンピアンが地域クラブの中核となりジュニア育成、生涯スポーツ推進に積極的に関わることにより将来地域クラブからパラリンピック、オリンピック選手が生まれと思います。パラリンピアンが地域スポーツに深く関わることにより、いつでも、どこでも、誰でもが地域で楽しめる環境作りが加速しクラブが本当の地域コミュニティの中心となると思います。パラリンピアンの地域密着の活動が地方、地域から日本のスポーツ界を変えることに繋がると思います。

 

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