PAJメールマガジン

第3号 2010年9月15日発行

IPCアスリート・リーダーシップ・サミット報告~選手の役割~

日本パラリンピアンズ協会 副会長 大日方邦子
(リレハンメル・長野・ソルトレイクシティ・トリノ・
バンクーバー/アルペンスキー)

 

 パラリンピアンの皆さん、こんにちは。副会長をさせて
頂いております大日方邦子です。

 

 まずはじめに自己紹介をさせてください。私はアルペン
スキー選手として1994年のリレハンメル大会に出場し、
それ以来、今年3月に開かれたバンクーバー大会まで5回
のパラリンピックに出場しました。そしてつい先日、9月
2日に日本代表チームからの引退を発表したところです。
アルペン選手としてのパラリンピックへの挑戦は終わりま
すが、国内のレースには引き続き出場します。また、今後
はパラリンピックの発展のために力を尽くしますので、ど
うぞよろしくお願いいたします。

 

 さて、今回は6月27~29日の3日間、ドイツで行わ
れたIPC主催のアスリート・リーダーシップ・サミットに
参加しましたので、その様子についてお伝えします。この
サミットの目的は世界中のパラリンピック・アスリート、
すなわち私たちパラリンピアンが、選手の立場からパラリ
ンピックがより発展してくために、どのように考え、行動
するべきか、ということを学び、議論することです。この
ような勉強会はオリンピックの世界ではずいぶん昔から行
われているそうですが、IPCとしては初めての試みでした。

 

 今回のサミットには世界21カ国から24名の選手が参加
しました。出身国も競技も様々です。一例を紹介するとアメ
リカ、ドイツ、フランス、トルコなどの欧米諸国もいれば、
ナミビアやウガンダなどのアフリカの国々や南米のアルゼン
チンからも参加者がいました。またアジアからは韓国やフィ
リピン、マレーシアなどの国々から代表者が来ていました。
出場競技も陸上、アーチェリー、フェンシング、7人制サッ
カー、パワーリフティング、自転車、射撃、車いすテニス、
スキーなど。もちろん、障害のカテゴリーも様々です。

 

 サミットで学んだ内容は「リーダーシップ」を発揮するた
めに必要なマネジメントスキルの基本です。IPCやパラリン
ピックを取り巻く具体的な状況やアスリートの性格分析など
をテーマにしながら「ステークホルダー」「マイルストーン
プランニング」「ガバナンス」などについて学びました。
参加者は5~6名のグループに分かれて、講義を聴いた後
にテーマに従ったグループワークで話しあい、発表をし、
ディスカッションするスタイルです。

 

 3日間、朝9時から夕方5時までのプログラムはすべて
英語で行われました。英語を母語としない選手も積極的に
発言をしており、世界共通言語である英語を使いこなせる
スキルがパラリンピアンにも必要であることを痛感させら
れました。また、講義合間のコーヒーブレイクや夕食後の
歓談などでは各国のパラリンピアンが置かれている状況を
聞けたことも大きな収穫です。とはいえ、英語を自由に操
れない私にとっては体ではなく頭のトレーニングに明け暮
れた3日間の強化合宿となりました。

 

 アスリートサミットを通じて学んだことはたくさんあり
ますが、私が最も印象に残ったことをひとつ共有させてく
ださい。

 

 パラリンピアンとして大切なことは「社会から何をして
もらえるかを期待する」だけではなく「社会に対して貢献
できることは何か」を考えることも大切だ、ということで
す。

 

 選手経験者がその経験を生かして活動するべき場所はたく
さんあります。IPCやIF(国際競技連盟)など世界的な組織で
活躍する人もいますし、それぞれの国のNPCや競技団体の
メンバーとして活動することもあります。また、選手個人の
立場からメディアに向けて発言をしたり、講演などを通じて、
パラリンピックについて多くの人にメッセージを伝える機会
も数多くあるでしょう。

 

 私たちにできることはたくさんあります。そして選手一人
一人が努力することと共に、時には競技種目を超えてパラリ
ンピアン同士が協力しあうことで、社会を変革するより大き
な力となり得ます。PAJはパラリンピアン皆さんが作り上
げていくものです。会員の皆さんの積極的な関与を期待して
います。まずは情報を共有することから始めましょう。
今後、このメルマガで共有したいイベントや講演会などの情報、
また、それぞれの試合などのスケジュールや大会報告などを
ぜひ、事務局までおよせください。もちろん、メルマガへの
感想や質問なども大歓迎です。お待ちしています!


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